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(こーりんとまりさ)
(プレイした事もない、設定画集もない=色々捏造)
(それにしてこの作者、ノリノリである)


 昔から、途方もない昔からすぐに朽ちてしまうものが嫌いだった。年月を重ね老いるように軋み崩れていくものと違い、目を離した空きに盛りを終えてしまうものがいやだ。花がいい例で、美しく咲き誇った大輪が茶褐色に色を変えて萎れる様は好きではない。
 ――じゃあ兄は醜いものが嫌いなのだな。
 大切な少女が言う。霖之助は、違いますよ。と答える。
 妖怪と人間の血が混ざり合う体は確かに霖之助に不老を与えてくれるが、自分の肉が美であるとは考えない。むしろこれこそ醜いものだと心の中で霖之助はつぶやく。
 なら兄は何が嫌い。
 ――僕は、
「よお邪魔するぜ」
 かくんと落ちる首に、香霖堂店主・森近霖之助は突如世界に引き戻された。かすむ目からずれた眼鏡を指先で押し上げ、膝の上に乗せたままの本の内容がまだ序盤ということを確認して、――寝てたのか。と頭を掻く。
 閑古鳥が元気に鳴く香霖堂とはいえ、唯一の従業員が昼寝なんてしてはいけない。
商品が置いてあるというよりはただ放置してあるだけの店内は外観より狭く、ごちゃごちゃとしていたが先ほどの声の主である少女は勝手知ったるとずかずか歩く。しかしどうやら客人でないらしく、霖之助がいる居間に向かってくる。目的は冷蔵庫らしい。そんな少女を一瞥し、霖之助は本のページを一枚めくった。
 少女の外見は小柄であったが、似合わず男勝りな口調ある。しかし服装はなかなかかわいらしい。首から胸元かけてフリルがあしらわれた白のブラウスに、魔反射の効能をもつベオウルフの毛を網込んで作った黒のサロペットスカート。柔らかいパニエで膨らんだそれは、そこからすらりと伸びる脚を幼く見せていた。くるりと回る度に、ふわりと白のエプロンが舞い上がる。
 モノトーンで統一された姿は地味にも見えたが、肩まで届く金糸の髪は目を見張るもので、服の暗さをうまく上品に変えている。
 そして何より少女はとびきりの美少女だった。少しつり上がった瞳が気になるものの、もし霖之助が少女と初対面であれば、髪と服の色にこんな見せ方もあるのだと関心していた。残念ながら霖之助は昔から少女を知ってるのだが、
「魔理沙、何度もいうがここは僕の部屋でそれは僕のもので君は客人なんだけど」
「おう、とりあえず茶受けはいらねーぜ。今は喉か沸いてるからよ。後で頼む」
 そう言うと少女は、――魔法使い・魔理沙は歯が見える程にかっと笑い、コーラ瓶を一気にぐいっとやった。

 霖之助と魔理沙の付き合いは長い。
 昔、霖之助は霖之助になる前に、霧雨家という大手道具店に師事したことがある。魔理沙はそこの一人娘だった。
 魔理沙が生まれる頃には霧雨家から独立していた霖之助だが、その後ちょくちょく関係を続け、魔理沙が霧雨家に勘当された今でも続いている。
「香霖。そろそろこたつ出さねーか?ここ吹き抜けで寒いぜ」
「開けてるんだよ、お客さんが入ってくるようにね。それに炬燵ならそこらへん探したら出て来るさ。ただし店内では使うなよ」
「どーせ誰も来ねーよ。それより何読んでんだ私が来てやったのに。本閉じてさっさとおかわりと茶受けだせ。お茶は焙じで菓子は練りきりな。出涸しなんて許さねぇ。ほら三秒以内に用意しろ」
「……いつもの棚の上から3番目に全部そろってるから自分でやれ。ただし一番上のみたらしに手を出したら追い出すからな」
「ちっ役立たずめ」
 ぺっと舌を出す魔理沙だが、彼女がそんなに腹を立てていないことを霖之助は知っている。ぱたぱたと去っていく後ろ姿をぼんやり見つめ、いつの間にこんなに大きくなったんだろうと小さく呟いた。夢の中の少女は霖之助の腰ほどもなかったのに。
 師匠の娘だからといって魔理沙に甘い顔を見せることのない霖之助だが、傍若無人でジャイアンを地で行く彼女の我に勝てたことなんてほとんどない。元々争い事が苦手で、耳元でギャンギャン言われるくらいならハイどうぞと投げてしまうきらいのある霖之助は、神経が図太く遠慮のない魔理沙と相性が悪い。同じく店の品物を勝手に持っていってしまう霊夢とも相性が悪いが、両者ともに苦手意識がある訳ではなかった。
 きつい文句も拒絶もないものだから二人は助長する。一度魔法具の類いが全て持っていかれ、生活が成り立たなくなったときもあったがその時も霖之助は大して憤慨しなかった。またやられると困るが、要は慣れだ。魔理沙が店に来る事も、霊夢が商品をかっぱらうことも。もちろん霊夢のに関してはツケ扱いである。払ってくれるかは別にして。
「……」
「おーす、茶淹れたぜ……ってなんだよ」
 もきゅもきゅと先に茶菓子を口に入れて魔理沙は戻ってきた。両手に一つずつ持った湯飲みとマグカップ(魔理沙が湯飲みで霖之助がマグカップを使用している)からは湯気が出ており、ついでに香ばしい香りもする。
「ありがとう、でも歩きながらものを食べるな」
「感謝に遠慮はいらねーぜ。盛大にやってくれ」
 尊大な口を叩きながらマグカップを差し出す姿に、昔は兄と呼ばれていたと思い出す。
(感傷だ)
 先ほどの夢がまだ引きずっているのだろうか。霖之助は舌打ちをしたくなったが、目の前に魔理沙がいるのでやめた。それにしても懐かしい夢だったと思う。たぶん森近を名乗り始めて幾分か経ち、比較的穏やかな時間が流れていた頃だろう。
 ――彼女を忘れ始めたぐらいだ。
 今は出無精の内向家の霖之助も心荒れた時期がある。それが現在でないなら構わないと思う霖之助だが、幼い魔理沙は見事にバッティングしてしまった。
 忘れていた癖に、と過去を振り返りながら霖之助は思うが記憶の中の自分は愚かでしかない。好きなのか?と尋ねてきた幼い青に、好きじゃない。と嘘を付いた。
 嫌いなのか。幼い魔理沙は今の魔理沙より遠慮がなくしつこい。好きじゃないと言っているでしょう、と大人気なく返す霖之助も幼かった。話題の人間はとっくに土に埋められているのに。
 老いた女なんて醜いだけですよ。なら兄は醜いものが嫌いなんだな。違いますよお嬢、
 じゃあ、何が
「おい、いらねーのか」
 ぱっと顔を上げるとマグカップを差し出したままの魔理沙が不思議そうに霖之助を見ている。
「……ごめん」
 彼女はいなくなった。香霖の時間の長さに追いつけなくなり、消えるように息を閉じた。
 霖之助が生きる10年も彼女が生きる10年も同じだったはずなのに霖之助は後悔した。
 人が嫌いというわけではないし、繋がりを断ちたいなんて思っていない。ただ、誰かと寄り添い生きるには、霖之助の時間は長すぎる。
 ――魔理沙なら。魔理沙程の器なら人間から魔法使いになれるかもしれない。と阿求は言った。
 努力だけでは養われない魔力とセンスを思えば、転化は難しくはないだろう。記憶の中でくすくす笑う少女に、霖之助は顔に不快を出す。
 そんな霖之助を見て魔理沙は驚いたようにマグカップを揺らしたが、憤慨したように畳に直接それを置いた。なみなみと注がれた茶は水面を揺らし、湯気と共に少し零れたが、霖之助は魔理沙をじっと見つめている。厚い眼鏡の奥にある色が何を唱えたいか、魔理沙には理解出来ない。
「香霖?」
「……もう少し」
 こんな情けない声を上げたのは久しぶりだな。と霖之助の頭の中にいるもう一人が笑う。苦い笑みだった。
「もう少しだけだ、魔理沙」
 香霖は魔理沙をじっくり見て、それからゆっくり逸らした。香霖から見た魔理沙は、霧雨家にいた頃の魔理沙と勘当された魔理沙、今近くに在る魔理沙と大して変わらないはずだ。魔理沙から見た自分もそうなのだろうと香霖は納得し、香霖は目を閉じた。
 その時の魔理沙の、見捨てられた、突き放されたような――大きく開かれた青い目を見ていれば何か変わったかもしれないが、香霖はそれを見逃した。香霖が見逃したように魔理沙もまた、香霖の手がいつまでも魔理沙から離れないことに気付かなかった。
 美しいものが嫌いなわけではなく、かといって醜いものが否なわけでもない。霖之助を置いて変わってしまうものが嫌いなのだ。でも、
「魔理沙。たぶん僕は君のことを嫌いにならないよ」
 人間という生を全うし、その過程で霖之助を置いていってしまっても、今の美しさが掠れてしまっても。
「……香霖、お前さっきからなんか変だぞ。悪いもんでも食べたか?」
「夢見が悪かっただけさ」
「寝てたのか、ダメな奴だな」
「自覚はあるさ」
 香霖に詰め寄る魔理沙の小さな額をぺいとやり、魔理沙が注いでくれた茶を飲んだ。長い時間が経ったとみえたが、大して冷めておらず美味しく飲めた。
「……美味しいよ」
「そーかよ」
 眼鏡の奥で笑う霖之助に、魔理沙はそっと腕を絡め肩に頭を置いた。それが魔理沙の機嫌が悪いことと知る霖之助は、左腕を魔理沙に預けたまま、マグカップを置いて、膝の上に乗せた本のページをゆっくりめくった。
 かくして。目覚めの良くなかったの香霖の気分は魔理沙にてなおったが、香霖のせいで機嫌を損ねた魔理沙はしばらく経ってもなおらなかった。
 香霖は確かに半永久といえる肉体と生命を持っていたが、必ずしも生まれおちた全員が老成を成し遂げることがないように、寿命に比例せず女性経験が少ない香霖はこれからすねた魔理沙に振り回されることになる。
 半妖、人間にかかわらず、男の鈍さは恋する乙女を置いていくのでいけない。



結論:書いている最中を思い起こせば、もう二人がいちゃついていればそれでいい。




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(♀ルルーシュ捏造)
(なぜかジェレミアがくっついて日本にきています)


 穏やかな気候のブリタニア帝国と違い、ここ日本の夏場はひどく暑い。品のないじめじめと土臭い湿気と遠慮なく照り付ける太陽。
 下品な小猿にはお似合いの気温だが、ジェレミアの大切な大切な姫君達にはまったく合わない。
 現に、薄い桃色の七分袖からちょこんと出た白い肌を見る度ジェレミアは落ちつかなかった。
「ナナリー様、暑くありませんか?お部屋に戻らずとも平気ですか?」
 部屋というにはみすぼらしい土蔵は、何度清潔にしてもほんのりカビ臭く不健康そのものだったが、こんな日の下よりはマシだろう。
 ジェレミアはさりげなく提案してみるが、妹君は大丈夫ですと笑っただけだった。
 ――ここがアリエス宮であれば。ブリタニア帝国であれば。この玉の肌を守る日傘もあったし、何より皇帝陛下の庇護が貴女様方を守るのに。
 しかし、ブリタニア帝国に捨てられ傷ついた我が主の矜持を臣下がどうこう進言するわけにはいかない。
 己の額から流れる汗を無視し、車椅子に座った妹姫から日を守るようにジェレミアはパラソルの位置を調節した。
「ナナリー様、ナナリー様。お加減は宜しゅう御座いますか?」
「ふふ、先ほどからそればっかりですよジェレミアさん。ジェレミアさんこそ暑くありませんか?」
「私は大丈夫です。私は暑いのは平気なのですよ、寒い方が苦手でしてね。いやはや、お気になさらず。」
 胸元をやや開けた(本当は閉めていたかったが、主君に暑苦しいと言われた)日本人の庶民服から出た肌は焼け、暑さににじんでいたがジェレミアは笑ってごまかした。
 部屋に戻りたい。いや、暑いからとかそういうわけでなく、ナナリー様、ならびに主君の柔肌にはこの気候は適していないのだ。姉様が外へ出るなら私も、と滅多に言われないかわいらしい我が儘を言った妹君にジェレミアはイエスユアハイネスと了解してしまったが、今は後悔ばかりしている。主君は主君でどこかに出かけたらしく(枢木の敷地とはいえ、主君のような可愛らしい御子が誘拐される可能性はないとは言えないのに)それに対してもジェレミアは落ち着かない。
 すぐに主君を追いかけて行きたかったが、付いて来るなと言われてしまった。臣下たるもの、主君のプライベートに入ろうなどとはもっての他であるが、少し寂しい。
 しかしその後すぐに私もとねだった妹君にジェレミアの感傷は飛んだ。早く早くと笑う妹君に、ならばせめて日傘をと、日本人から与えられた土蔵をひっかき回して少々でかい陳腐な色のパラソルをジェレミアは見つけた。
 誇りまみれの上煤けていたが、無いよりましだとばさばさやってから妹君を中に入れる。
 下品な色だ。日本や枢木家のものは全てそう称さないと気がすまないジェレミアはパラソルに毒づいた。
 だが眩しくないか暑くないかと心配するジェレミアを妹君はころころ笑ってくださる。
 なんという思いやりにあふれた方だ。さすがは我が主の妹君。マリアンヌ様の御子。
 そう笑うジェレミアの穏やかな空気に突然雷が走った。
「ジェレミア!!」
 悲痛と罵声が混ざったような声が土蔵まで響く。妹君に向けていた顔を反射的に上げると、腰まで届く黒髪をたなびかせた我が主が、その繊細な姿に似合わないようなどすどすという音を立ててこちらへ向かって来ていた。
 ラベンダー色のワンピースから覗く足は頼りない程白くて細い。ジェレミアは臆面もなく悲鳴を上げた。
「あ、あああ危のう御座いますルルーシュ様っ。私が向かいますゆえしばしのお待ちを!!」
 パラソルを手で支えているのも忘れてジェレミアは叫ぶ。
「何が危ないだっ走っているだけで!!それよりナナリーになんて事を!!」
 ジェレミアの主君、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。捨てられた皇女。そんな主君は、もう唯一の家族と言っていい妹君をひどく溺愛していた。
 妹君はご尊母であるマリアンヌ様の事件を目撃したため、目と足が不自由だ。そんな妹君の世話を臣下であるジェレミアに任せてくれることは大変な名誉であったが、めったに見ない主君の必死さにジェレミアは背中が冷たくなった。
 しかし、主君は情けなくパラソルにしがみつくジェレミアなど無視をし、愛しい妹君に飛び付いた。
「ナナリー、今すぐ部屋に入れっ夏の暑さに当てられては大変だ!!」
 どうやらジェレミアと同じ心配をしているらしい。
 主君は車椅子の柄を持ち、妹君を安全な部屋の移動させようとした。ジェレミアがわたわたと私がやりますと言えば、皇帝陛下譲りの紫電がぎらっとオレンジをにらんだ。
「ひ……っ」
 蛇ににらまれたカエルだってこんな声は出さないだろう。
 そんな臣下を不憫に思ったのか、妹君も珍しい厳しい調子で姉につめよった。
「もうっお姉様ったらいきなり。……ただいまの挨拶もありませんの?」
「……っ、悪かった、ただいまナナリー。しかしダメじゃないか。外は暑いから部屋に居ろと言ったのに」
 ジェレミアの三乗くらい妹君に甘い主君は少し動揺しながら叱った。しかし妹君はしらんぷりして姉に接する。その妹とかたくなさにジェレミアは主君の小さな肩がひくりとしたのに気がついた。
「私が部屋から出たいと我が儘を言ったんです。ジェレミアさんを咎めないで下さいな。」

「………しかしっ、……ジェレミア。私はくれぐれもナナリーを部屋から出すなとあれ程言ったではないか!」
 分が悪くなったのか主君はジェレミアを改めて叱る。これにジェレミアは深く頭を下げた。主君の言い分に正しくないは必要ないのである。
「申し訳ございません。お怒りはご尤もでございます。どのような罰も受けますので……」
「ジェレミアさんったら」
 己の非だけを認める臣下にもうっ、と膨れたように妹君は言った。穏やかな性格と思われがちな妹君は、アリエス宮時代は姉君より活発な御子であった。マリアンヌ様の少々破天荒な性格も妹君の方が濃く受け継いでいる。
 そんな妹君が臍を曲げたというのは大変なことだ。妹君を溺愛する我が君にとっては。
「な、ナナリー……?」
「お姉様こそ……、ジェレミアさんが外は暑いから出てはいけないとおっしゃったのに……。それにお出かけの時にはかぶっていらっしゃったラベンダーの香りがするお帽子、何処に置いてきたのですか?」
「そ、……それは。」
 スザクが。
 ジェレミアが一番聞きたくない名前が我が君からこぼれる。
 活発とは無縁の主君が土蔵を飛び出す理由は一つしかない。
 枢木スザク。日本の現総理大臣枢木ゲンブの嫡子であるにも関わらず、外見も中身も猿そっくりのくそガキだ。
 初対面でジェレミアの主君を殴り飛ばしたという前歴を持つスザクは、その後も主君に不敬を振る舞った。幼少とはいえ、皇族になんてことをと真っ青になったジェレミアと何度も対決してきた彼だが、ジェレミアの主君はどれだけ意地悪いたずらをされても、どうやらあちらの味方らしい。その事もあって、ジェレミアは大人気なさを自覚しながらもスザクが嫌いだった。
 自分のような年も離れた臣下より、同年代に近い方が親しみも持つだろう。しかし何故かな、ジェレミアの心は重かった。
 ほとんど人質同然に引き渡される姉妹に無理を言って付いて来たのはジェレミアだ。
 贖罪のつもりでもあるが、主君は一度断った。もう自分達にそのような忠義の価値はないのだと。しかしジェレミアは日本にいる。
 だが当然ジェレミアはマシンでもサイボーグでもない、食べるものを食べないと飢えるし、寝転べば場所を取る。枢木から出される食事は二人分しかないし、ジェレミアも主君の膳から分けてもらうはいかないのだが、心優しい妹君が許さない。
 妹君は自分が寝る小さい布団にジェレミアを入れようとするし、勝手に付いて来たジェレミアに自由も与えようとする。
 あまりの優遇に涙が流れたが、そんな真似を皇族にさせるわけにはいかない。少しでも良い暮らしをと夜こっそり抜け出して、イレブン共に混じりながらジェレミアは働いていたりするのだが、あまり上手くはいっていない。元貴族、捨てたと思ったなけなしのプライドがいつも邪魔をする。
 主君が着るラベンダーのワンピースや同じ花のが挿さった帽子はジェレミアが世話の合間にした労働の末に買ったものなのだが、アリエス宮で二人が身に着けていたものと比べると紙の方がまだマシな気がする。
 しかし臣下として主に不憫な生活をさせることが悔しくて、自分の無理が腹立たしくて、――こちらに来て何度無力を呪ったかはわからない。
 ――戦争さえなければ、いいや、自分があの時マリアンヌ様を守れて居れば、こんなに優しいお二方にに惨めな思いは。
「……ナナリー様、ルルーシュ様も、もうお部屋に戻りましょう。ジャスミンがそろそろ乾くのでお茶の時間にしませんか?庶民のものですが、なかなか良いビスコッティが手に入ったのです。」
 ブリタニア帝国にも日本にもあの時の警備の不出来を責めるものはいない。ただジェレミアの目の前には捨てられた姉妹がいるだけだ。ジェレミアは垂れる眉をなんとか持ち直し、車椅子の柄を握り締めたままのルルーシュの手を外した。そしてそのまま自分が持つ。
 妹君はなんとも申し訳なさそうな顔をしているが、そのような表情はマリアンヌ様の御子に必要ない。
 傲慢でいい、不遜でいい。我が主にそれくらいの元気があれば――、
「え……、るるるルルーシュ様ァ!?」
 元気があればいい。そうジェレミアは天に願ったばかりだ。しかし、何とも言えない歪み苦しんだ表情をする主君は踵を帰して逃げてしまった。……逃げた?
「ちょ……待っ、ルルーシュ様待っ!!!」
 元皇族で運動が得意ではない主君にしては、ほれぼれするスピードで小さな背中が雑木林へと消えて行く。
 がむしゃらながら美しいフォーム、反射的に姫君をたたえようとする己の頭をジェレミアはしばいた。
 外は危ないのに!こんな照り付ける太陽の下全力疾走なんて体力のないルルーシュ様がいつまで持つか!!きっと持たない。持たないまま炎天下じりじり乾いて……ジェレミアたすけてなんておっしゃるのだ!!それにあんな走り方ではいつ転ぶかわからない!大切に大切に真綿にくるんでお守りしたいのに、どうしてルルーシュ様は走るのですか!?
 混乱激しいジェレミアだが、すぐに主君を追わねばならないことはわかっていた。しかし妹君をほっぽり出す訳にはいかない。わーわーと慌てている内に主君の背中はもう見えなくなってしまった。日はまだ高いが、不貞の輩は24時間フル営業なのだ。
「なななナナリー様!不敬を先にお詫びいたしますがお部屋に入って、誰もいれないようにお願いします!!わ、わ私はルルーシュ様を……!」
「お願いしますね」
 わたわたと目からオイルのような涙を流すみっともない臣下を落ち着かせる笑みを浮かべる妹君。その柔らかさに安堵とこの方を置いていっていいのかと不安に駆られたが、押し出されるように常套句で答えジェレミアは主君が消えた方角へ走り出した。





(どっこいオレンジ君(ジェレミア)の過去を捏造)
(スザルル→ジェレミアっぽい)

 どんなに身を焼尽くす激情も哀傷も、時間が過ぎ去れば自身、平素と変わりない。――そんな事に気付いたのは、姉を亡くして一年が経った頃だろうか。彼女は私が5つの時にテロに巻き込まれ亡くなった。
 彼女の葬式の最中、私は叫ぶように泣いた。父にみっともないと叱られたが、母は優しく抱いてくれたのでそれも存分に。たしか妹はまだ乳飲み子だったので、私以外に響いた声は思い出の中にはない。きっと幼い自分は葬儀の中一番五月蠅かったのだろう。
 いつまで泣いたかは覚えてないが、一年は持たなかった。思い出さなくてはならない程遠くにある哀惜を、幼い私がずっと持ち続けられたわけがない。年を重ね、V.V.に体と頭を弄られ、帝国から離れた今は、姉だけでなく妹や父母の顔すらわからない。
 しかし、――自分が育ったように――、幼くいられなかった日々を経て、感情が凝固してしまった主君を私は見つめた。
 唯一のよりどころで支えであった妹君のナナリー様を失い、一ヵ月の失踪後に現れた主君は頂点に居る。
 マリアンヌ皇妃の美貌を一番に受け継いだ器量は冷たく、皇帝陛下の紫電は嘲笑と共に世界を見下したが、私は歓喜した。
 副指令である扇からはゼロの死亡が伝えられ、その挙動不信さから生存を疑っていたが真実だったとは。
 本当ならばあの狭く男臭い場所になど居てはいけないような貴い方を追放したと言った扇の顔に一発打ち込めて良かったと私は思う。あと二三は入れないと気がすまなかったが、血相を変えたヴィレッタが扇をかばった為断念した。
 臣下である私が何度扇を殴っても主が受けた屈辱が和らぐわけではない。主が追い立てられている時に何も出来なかったジェレミア・ゴットバルトは無力なのだ。
 サザーランドジークで辿り着いた玉座に我が君はとても疲れた顔で座っていた。主の騎士だという枢木スザクもいなかったが、これが愛すべき我が君の真実なのだと気付いた。
 我が君が本当の自分を隠される為に幾重にも重ねられた仮面を打ち砕くのは己ではないと知っていたが、と私は小さく笑った。
「不満か?」
 私がくたびれたような我が君、――ルルーシュ様を見やると、ルルーシュ様も私に気付いたらしく薄く笑みを浮かべて下さった。それは嘲笑にも似て居る。
 以前なら振り向くだけで薔薇が咲いたように艶やかに輝いたのに、その美しさがごそっと萎えてしまわれた。それでも魅力的ではあるが、――お労しい。己の不在にどれだけの辛酸を舐め、しなくていい苦労したのだろう。私はいつまで経っても無力で無能だ。
 己の不甲斐なさに歯がみしていると、ルルーシュ様は少しどもるように言葉を繋げた。
「スザクを……ナイトオブゼロにした事を」
 お前は怒っているか。
「何をおっしゃるかと思えば」
 こちらも事情が事情なのでよくは知らないが、ゼロの尊大な態度とは裏腹に、ルルーシュ様にはいつも何処か謙虚な部分があった。
 謙虚は美徳だというのがイレブン共の文化であるが、ルルーシュ様はそのような身分ではないし、そんなことしなくてもいいのだ。しかもそれを従僕たる私に向けるなど、あってはならない。
 それに、枢木スザクはナンバーズ出身ながら優秀過ぎる程に優秀な人物だ。戦闘技術の結晶であるナイトメアに乗り、主君が歩む王道に立ちふさがれるものを砕くことが出来る。萎えたその側に寄り添い、苦悩を分かち合えることも。
 あれ程までに主君が求め続けた才能に嫉妬はないと言えないが、私は私が出来ることをするまでだ。側を離れたとて、誓う忠義に変わりはない。
 誇るように常套句に乗せてその旨を伝えれば、主の美しい顔は瞬く間にゆがんでいった。
「違う、違うんだ」
 ジェレミア。気怠げに首を振る主君は苦しそうにこちらを見る。ゆっくりと伸ばされた手に、立上がり、歩を進めて足下に跪く。恭しく触れる許可を取り、世界を掴むには細い指を出来るだけ優しく取った。
 私は全てを失った。マリアンヌ様をお守り出来なかった罪に始まり、皆がうらやんだ騎士道から転落し、もう貴族でもなくなった。体に流れる半分はオイルで出来ており、関節が起動音を上げて私の歩を進める。もう瞳の片方は景色を正しく映さないだろう。
 しかしこれは、主の、ルルーシュ様の側にいる為に必要な事ならば。微力ながらもルルーシュ様の力となり、ルルーシュ様の明日を手伝うことが出来るのなら悔いはないのに。
「ルルーシュ様……?」
 至高の手。指先から、内に流れる血まで下賤たる私とは違う隔絶された存在。誇っていいのだ。自分の生まれを、その貴さを、貴方は主なのだから。
 それなのに、ルルーシュ様は何かの痛みにでも耐えるように呟いた。
「お前はいつでも逃げていいんだ」
 今よりもっと、早く時間が過ぎればいい。




(真田ヒロイン夢)
(恋する女の子は忍者)
(謙信は男派)


桜よりも梅が美しく映える春の日差しをいっぱいに浴びる。まだ冷たい空気を軽く吸えば、何故かな、胸が熱く高鳴るのがわかった。
それはときめきにも似て、私が主を見つめる時と同じ鼓動が体と鼓膜を響かせている。
――春はいけないね。いい気分でいたのに、むかつく同僚を思い出した。
忍びらしくない髪色を持つそれは、ちっとも困った風では無くぼやくのだ。その顔はいつでも疲れた女のような笑みを浮かべている。それも私は嫌いだった。
「旦那が元気だ」
わが主は。我が主は春だろうが冬だろうが、常夏だろうが雪国だろうが、いついかなる時も溌剌として、その美しい生を陽光の如く輝かせていらっしゃる。主の前では影ですら日向にある。何よりも暖かなその場所で我らは息を吹き返すのだから。
そう言い返せば同僚は「お前旦那が好きだねぇ」といい「羨ましいよ」と続ける。
「羨ましいに決まってるだろう」
その理由がわからず首をひねる私を呆れたように見る女、――忍うんぬんではなく、人としても珍しい金色の髪を持つ美しい同郷は、しぶしぶながら私の同僚に同意した。
今は敵国の忍びである同郷と屋根の上とは言えのんびり語りあうのは、もう長いことなかったが、最後に別れた日以来彼女は何も変わっていなかった。少しだけ伸びた背と極度に突き出た胸以外は。
「かすがは軍神を好きなのでしょ」
この下で、我が主の主と酒を飲み交わす酒豪の二つ名を言う。同盟という一時の仮初を肴に、昨晩から飲み続ける大器は健気に帰りを待つ部下を知らない。
ちなみに我が主は夜が更ける前に倒れ、同僚の介抱にあっている。もちろん私だって介抱くらいの事はできるが、あの部屋に入る権利を私は持ってないので、久方振りに再会した同郷とあの襖が開くのを待っている。
私と違い、この同郷は部屋に入る権利は持っていたが、勇気を持っていなかった。
「ぐ……、軍神ではない!軍神様、または謙信様と呼べ!……いや、謙信様の名を呼ぶな。お前ごときが呼んでいい名ではない!」
美しい同僚は、済ましていれば月さえも凍り付く顔を子供の様に真っ赤にさせた。
好きなのだろうと思う。私よりみっつは上である彼女は同郷の誰よりも夢を見ていなかった。現実を諦め、いつか仕える主君では無く、任務の成功に命をかけようとしていた。
夢を見させたのは軍神だ。それから同郷は必死にその夢にすがりついている。目覚めたくないと泣きながら。
「軍神はケチだな」
同郷の耳がぴくりと動く。しかし思ったような反論は返ってこなかった。
もしもこの悲鳴が聞こえなくとも、顔を見ればわかる筈だ。
恋する女がくるくると表情を変えるように、自分の懐刀が自分をどんな風に見て、その一瞬に何を思い、考え、憂いを見せるのか。我が主のような朴念仁でも、同僚のような捻くれでもない癖に。失礼だが、馬鹿かと思う。卑怯だとも。
「こんな日であれば、想いが届く様な気がしてならないけどなぁ」
たとえ武道を行くことと武功を立てること以外に目が無い主でも、真っ直ぐに想いを伝えれば考えてくれる。不実を嫌う主だ、私の想いを無下にはしない。あの優しい主なら私を包みこんでくれる。私はいつも夢想する。あのしなやかな腕に抱かれる日を。
「まだ御見えも叶ってないのに無理だってー」とさらりと言った同僚の頬をおもいきりぶったのは秘密だが。
「かすが?」
美しい女が恋する男はまた格別に美しく、並べば花が舞い、輝きが増した。その光は我が主が放つような日溜では無いけれども、この美しい同郷が笑えば、あの寒い国が春のようになる事もまたわかる。わかるのだが。
「お前は……まだ幼いから」
好きと言える、と馬鹿にした美しい横顔を私は叩けなかった。



大人のような顔をしたい子と、子供に戻れない若者二人。

(真田ヒロイン(忍び)は14~17歳くらい)
(幼い頃から幸村に惚れていて(一度命を助けられた)、幸村が大好きな子)
(幸村に見初められれば、お嫁さんになれると信じてる。でもまだ幸村はヒロインのこと知らない)
(だから幸村が一番信頼する佐助がライバル(ちなみに佐助は同僚ではなく上司です))
(佐助はヒロインに苦笑い)


(もう少し若かったら、同じ夢をみていた。)






(こじうろう×伊達ヒロイン)
(心の目で見たらアダルティ)


小十郎と動く唇のひとつひとつを目で辿り、その甘さのひとつひとつを噛んでいると頬をはたかれた。
「動かないつもりなら退け」
「動くさ」
顔の輪郭を目で追い、肌の白さを指で探す。なだらかな肩から真っ直ぐに落ちる先に腕は無く、かき抱く事は出来ても繋がることの無い全てが俺を女にさせる。
閉切った部屋に夜のような黒は訪れず、かといって苦悩を払う光はない。
薄闇の中で愛した色だけが瞳に映り逃げてはくれない。
「小十郎」
昼間での行為を持ち掛けたのはこちらからだったが、まさか乗るとは思わなかった。艶や色のある女ばかり愛でる政宗様が、年も超えたこの女を相手にするとは思えない。いまだに武芸を続ける体に丸みはなく、きつく抱けばこちらの皮が痛む。その腕は共に走った時には酷く心強かったのを今でも忘れない。切り落とした時の堅さでさえ。
何を感傷しているのか。
(堪る……と言うのか)
片目の主に叶わぬ恋慕に泣く体がひたすらに欲しいと願った。だから触れるすべてを強く持たなければならない。いつでもこれが最後になるはずだから。
残った腕が一時だけの顔を見せる。
「ねだって」
悲しげな瞼に情が落ちた。



お仕事さぼって逢引。
政宗さんは小十郎がヒロイン好きって知ってるので応援してる。
オカシイナ!コジュウロウガヘタレテクヨ!!!!




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だにー
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女性
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管理人
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読書
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まったりしてたりしてなかったり
のんびりしてますので、どうぞ

 

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