(エアリスとセフィロスがラブラブな時点でおもいっくそパラレル)
(死んでる人間が普通に生きてたり、ヴィンユフィだったりするメタクソ!)
(セフィロスとエアリスくっつけば、マテリアとかなくても(俺の)世界は救われるよ!)
(ナチュラルに同棲してます)
エアリスが目覚めると朝だった。ザックスからお土産にもらったイカ型の時計の短針はは7を指している。通常ならまだ寝ていても問題のない時間で、新しく年を向かえた今日では二度寝しても構わなかったが、エアリスは急いで起き上がった。寝間着のまま隣りのリビングに向かう。
ガチャッと勢いよくノブを回したが、すぐにソファーに寝そべる一つの大きな影を見つけ、そっとドアを閉める。
遠くから眺めることも煩わしく、なるべく足音を立てないようにソファーにエアリスは近付いた。
相手は神羅最強のソルジャー。ひいてはこの惑星最強の人間(そう、人間)で、エアリスのような一般市民が消す足音など聞き取れないはずもなかったが、閉じられた瞼は彫刻のように動かない。
安らかな眠り――、と言うには、その長い足は窮屈そうにはみ出ていたし、白いふあふあのボアに黒い皮のコートは合っていない。
さすがに、この身の丈より長い彼の愛刀『正宗』は外してあったが、いつでも手を伸ばせるように同じソファーに立て掛けられていた。
「寝てる……の?」
彼の顔近くまで忍び寄り、フローリングの床にぺたりと座る。
微かに上下する胸元を見てエアリスは尋ねたが、返事はない。しかしエアリスはようやく心から安堵した。
セフィロスが帰ってきた。
本当は今すぐキスして抱き締め、同じ愛を返されたいのだが我慢する。
ふいに蘇る寂寥に、会えなかった日々を数えるエアリスと、セフィロスがこの部屋から去ってしまうまでの時間を計算するエアリスが現れた。
エアリスにとってはたった一人のセフィロスでも、世間に立つセフィロスは戦争を終わらせた英雄で生きる伝説である。戦火が静まった今でも、彼の任務は続き、会えない日々が続いている。
セフィロスの底知れない実力とその需要を思えば基本的に仕方ないとあきらめているが、今年はどれだけ一緒に過ごせるの?とクリスマスが始まる一週間前に聞いた時、明日から長期任務だと言われたのは流石のエアリスでも絶句した。
任務の二文字なら駄々を捏ねる訳にはいかないし、子供扱いもされたくない。
でも、いつ帰って来るの?と思わずエアリスは悲壮な声を上げてしまい、年が明けたらすぐにと希代の英雄に無茶な約束をさせてしまった。
マジかよ!アイシクルから大氷河周るんだぜ!?と側にいたザックスは悲鳴をあげたが、セフィロスの鋭い眼光に直ぐさまビシッと敬礼した。
――した後、かなり後悔していたみたいだけど。
まあクリスマスをヴィンセントに甘えるユフィと、クラウドに熱視線を送るティファの間で切なく過ごしたことを思えばお釣が来るくらいだ。二人の恋路を応援する身としては喜ばしい部分もある。でもそれはエアリスの隣りにセフィロスがいて成立することなのだ。
エアリスはクスクスと笑って、ソファーで寝るセフィロスを見つめた。
英雄色を好む。とは言うが、女であるエアリスが羨む程に美しい容姿のセフィロスは誰も寄せ付けない輝きを持っている。
眠るセフィロスを先ほど彫刻のようだとエアリスは思ったが、セフィロスそのものは石膏よりクリスタルの透明さがあった。
触れてもいい?と尋ねたのも許可をもらえたのも最近で、その時と同じように瞼に唇を落とせば冷たさに気付く。
人が持ちうる温度、触れた場所から溶けてしまえばいいと言ったのはセフィロスだった。
こんな恥ずかしいセリフを言っても決まってしまうのは盲目のフィルターだけでない。アフロディテもかくやというセフィロスの容姿あってこそだろう。ザックスが言えば場は盛り上がるが、笑いが先にきそうだし。
ひとしきりセフィロスを眺めた後、エアリスは小さくくしゃみをした。高揚した体が落ち着くにつれ、リビングに暖房が掛かっていないことを思い出す。
年明けに帰ると約束させたのはエアリスで、このまま部屋に放置して神羅最強のソルジャーに風邪でも引かせたらルーファウスに何を言われるかわからない。もとい、風邪を引かせるつもりもない(彼を看病するのは魅力的であっても)エアリスは、少ししびれる足を起こし、まず暖房をつけようと部屋の隅に向かった。
が、途端、ぐいっと遠慮のない力がエアリスの腕をつかむ。痛みはないが揺らいだ体を振り向かせると、美しい英雄が不機嫌な顔でいた。寝起きそのものの顔だった。
「起こしちゃった?」
急いでエアリスが側に戻ってもセフィロスは笑みを向けることはない。少し不安になってセフィと呼ぶと、セフィロスは小さく呟いた。
「君がいなかった」
え?とエアリスは首をかしげる。
「夢にお前がいなかった」
それ以上にセフィロスは言葉を繋がなかったが、夢見が悪かったの?とエアリスが聞けば微かにああと答えた。
「不愉快な夢だ、目覚めて気付いた」
「私はここにいるわよ」
わかってる、とエアリスから手を放す。名残惜しい気もしたが、ソファーから身を起こしてボキボキ首を鳴す姿は英雄ではなく、エアリスのセフィロスである。エアリスは微笑んだ。
「どうしてソファーに寝ていたの?」
セフィロスの髪を手櫛で整えながらエアリスは尋ねる。
「ならば何故俺を起こさなかった」
薄く笑うセフィロスにエアリスは意地悪ねと笑う。ヴィンセントに甘えるユフィのように、――とまで幼くはなれないが、寄り添えば回される手に、微かに香る血の匂いに酔ってしまいそうだった。
「今年はいつまでいれるの?」
「今から三時間後にジュノンへ向かう」
「……いやね、デリカシーの無い男って」
エアリスはセフィロスの厚い胸板に頭をぶつけた。
「秘匿も考えたが、露呈した時の罰則を恐れてな」
「あら、英雄様にも恐れるものがあったのね」
「君に関しては怖いことだらけだ」
「ふうん、ならさっさと起こせばよかったな。すぐに出ていっちゃうなら」
「起こされたさ」
膨れ顔をつくるエアリスをセフィロスはなだめるように耳元でささやく。
「君が触れた場所から、溶けていくんだ」
これみよがしに、エアリスが先ほど触れた瞼をセフィロスは軽く閉じた。
「セフィ、いつから起きて――」
エアリスの質問にセフィロスは答えるわけはなく、三時間という決められた時間を守るため迅速に行動した。
溶けてしまったのは、どちらであるという答えはデリカシーがないので秘匿とする。
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