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 葉佩がこの学園に来た時、冗談ではなく僕らの学校は戦場だったと黒塚は笑う。キコキコといつも手に持つガラスケースが日に照らされキラキラと輝いている。
 そんな眩い黒塚にそうだねと昼飯代わりのガムを噛みながら、葉佩は慣れてしまったこの遺跡研究部室をぐるりと見渡した。南棟だということを忘れそうな静けさにある部室はカーテンを閉め切れば暗闇に落ちてしまう。壁には石、石石石。まるでホラーだと葉佩はもう一人いるらしい『石研』部員に同情した。
 ここまで石が増えたのは、葉佩にも責任がある。葉佩の仕事場である墓地に最近頻繁に黒塚を連れていってしまっているからだ。石さえいればそれでいいと危ない顔で笑う黒塚は一度潜るごとに遺跡の石を大量に持ち帰る。前はポケットに詰める程度だったが、今では馬鹿みたいにデカいリュックを背負い、肥護の制服よりもぱんぱんになるまで遺跡の石を入れてほくほくと葉佩の後ろをついてくる。
 しかし見掛けどおりに貧弱な黒塚はリュック(イン飽和状態の石)を背負うなんて耐えられず、すぐにへばってしまう(へばる前に歩みも鈍い)。だが黒塚がへばると一緒に連れて来たバディの取手が手伝うよと言いかねないので(取手はバスケ選手であるが同時に保健室の常連でもある)葉佩は化人を退治した帰り道だけ荷物を半分もってやることにしている。あとは自己責任、最近定例となってしまったバディ二人に葉佩は珍しくきつく言った。
 自己責任なら、と黒塚がリュックを二つ持ってきた時はさすがに怒ったが(みっつじゃないところが黒塚らしい)、葉佩の手伝いもありこの部室はカビとコケ臭くなってきた。バスケ部の幽霊部員である葉佩にはあまり関係ないけれど、昼飯場として利用させて貰う身としては複雑である。
「日本の一昔まえにあったドラマのタイトルみたいだね」
「君にとっては今も戦場だろうけどね」
 黒塚の言葉に毒も刺もなく、あるのはスパンとよく切れる閃光。ただ刹那の走りには眩しさも人を傷つけることのない。それは反対に黒塚が人、ひいては葉佩に一定以上の興味がないことを教えてくれる。黒塚は腕に抱くアルテミスやその周りにいるエルフ達にしか愛を渡さないのだ。人としてどうだと葉佩に詰め寄るつもりはない、葉佩にだって女神はいる。
 黒塚は「詩人だね」と笑い、ガラスケースを机の上に置いた。だらしなくイスに座る黒塚を見れるのは今は葉佩しかいない。
「最近、よく此所にくるね」
 喧嘩でもしたの?と簡単に繋げた黒塚に葉佩の奥歯がじゃりっと鳴った。ペパーミントのガムは舌に甘さに似た痺れを押しつける。
「黒塚、思うんだが」
「なんだい?」
 学園は戦場だった。平定をのぞんだわけではないが、踏み荒らしていく内に地面は平らになっていった。しかし小さなささくれは残るもので墓荒らしの足裏を切り裂いていく。
 あまりに増えすぎた味方にパワーバランスを考えてか裏切り(いや、表返り)ものが出るような。別離の足音と気付き掛けの焦燥を伴い最終回は近付いてくる。
 お前に降り懸かる幸も不幸も正しいと思うなクラン・ハンバート。すべてが喪部だったらよかった、そうすればきっと。
「黒塚が敵じゃなくてよかった」
「嬉しいね、味方だと認識してくれたの?」
 そうだね、と葉佩は口の中からガムを出し、紙で丁寧に包んだ。
「黒塚に銃口を向けても勝てる気がしないんだ」
「鉛玉は僕の好みじゃないからねぇ」
 だから僕は君の後ろにいるよとケラケラ笑う黒曜石に、今夜すべてに終わりを告げると今決めた。
 ここは戦場、出来ないことはあきらめろ。だからさよなら皆守、俺はお前を救えない。俺じゃお前を救えない。俺はお前は救わない。
「手遅れな気もするけれど」
「俺たちはヒーローじゃない」
 俺"たち"って誰なんだい。まっすぐな瞳に葉佩は笑うだけ笑って、夜が明ければわかるさと言った。
 これが黒塚が思い起こす限り唯一の、葉佩九龍の別れの言葉ではなかったのだろうかと、のちに桜の下で呟いた。



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 本気出して考えたらわけ分からなくなった。
 ので、自分の中でセフィエアをまとめてみる。


セフィロス→英雄。めちゃくちゃ強い、敵なし。懐に入れば楽勝?寄せ付けなければなんてことないのさ!狂う前が前提だから、厳しいけど根っこは優しい。美形なので果てしなくモテる。エアリスが手に入る前の女遊びはひどかった。どこか抜けているが天然ではない。ふだんから無表情なので不機嫌オーラは凄まじい。子供の頃からエアリスが好きだけど自覚したのは最近で自重しようと思ったのも最近。
(エアリス)>任務>>エアリス>(超えられない壁)>その他>(宇宙)>ザックス
くらい。狂ったらジェノバがどっかに入る
かずひこはザックス好きだよ!大好き!
某サイトでセフィロスとうちゃんなる表記を見つけ、はあはあのたうち回る。ので家庭的なセフィロスが頭にあるけど、基本は出来るけど応用は無理。
色々他人のことも考えるけど、基本エアリスがいればいいよ笑顔ならさらにいいよみたいなスタンスなので危険。

エアリス→ザックス・クラウドとめつうりしながらも落ち着くところに落ち着きました。基本は天然の気は強いけれど根はしっかりしている。頭はだいぶ切れるので敵に回したくないタイプ。つかエアリスに手を出すと、赤髪・ハゲ・黒髪・銀髪の順に襲撃されるのでやめた方がいいね!銀髪まで行くと命はない。セフィロスの不器用さをうまく受け止め、手綱をひく肝っ玉母ちゃん(予定)春の陽気より、夏の爽やかさが似合うんじゃないかな。セフィロスのことたまにセフィと呼ぶのは俺のジャスティス!セフィロスに対する愛情は母性愛に近いものがあるけど、基本ヤキモチやき。ちなみにセフィロスは身長でかいし息子さんもでかいと予測してるから、エアリスに全部入らないよ!


セフィエア→基本はべたつかないけれど、ナチュラルに同棲→夫婦→子作りしました→上手にできました→な感じ。セフィロスは何人女が寄ろうともエアリス以外に眼中にないけど、たまにエアリスは目移りしてしまうけど旦那が一番だわ。現実問題が山づみなので、恋人・夫婦間は良好。なんだかんだでエアリスに未練のある(無自覚)ザックスはセフィロスにとって敵だけど、セフィロスを取っちゃう(任務で)ザックスはエアリスの敵。ザックスをかわいがりたいという罠




(エアリスとセフィロスがラブラブな時点でおもいっくそパラレル)
(死んでる人間が普通に生きてたり、ヴィンユフィだったりするメタクソ!)
(セフィロスとエアリスくっつけば、マテリアとかなくても(俺の)世界は救われるよ!)
(ナチュラルに同棲してます)


 エアリスが目覚めると朝だった。ザックスからお土産にもらったイカ型の時計の短針はは7を指している。通常ならまだ寝ていても問題のない時間で、新しく年を向かえた今日では二度寝しても構わなかったが、エアリスは急いで起き上がった。寝間着のまま隣りのリビングに向かう。
 ガチャッと勢いよくノブを回したが、すぐにソファーに寝そべる一つの大きな影を見つけ、そっとドアを閉める。
 遠くから眺めることも煩わしく、なるべく足音を立てないようにソファーにエアリスは近付いた。
 相手は神羅最強のソルジャー。ひいてはこの惑星最強の人間(そう、人間)で、エアリスのような一般市民が消す足音など聞き取れないはずもなかったが、閉じられた瞼は彫刻のように動かない。
 安らかな眠り――、と言うには、その長い足は窮屈そうにはみ出ていたし、白いふあふあのボアに黒い皮のコートは合っていない。
 さすがに、この身の丈より長い彼の愛刀『正宗』は外してあったが、いつでも手を伸ばせるように同じソファーに立て掛けられていた。
「寝てる……の?」
 彼の顔近くまで忍び寄り、フローリングの床にぺたりと座る。
 微かに上下する胸元を見てエアリスは尋ねたが、返事はない。しかしエアリスはようやく心から安堵した。
 セフィロスが帰ってきた。
 本当は今すぐキスして抱き締め、同じ愛を返されたいのだが我慢する。
 ふいに蘇る寂寥に、会えなかった日々を数えるエアリスと、セフィロスがこの部屋から去ってしまうまでの時間を計算するエアリスが現れた。
 エアリスにとってはたった一人のセフィロスでも、世間に立つセフィロスは戦争を終わらせた英雄で生きる伝説である。戦火が静まった今でも、彼の任務は続き、会えない日々が続いている。
 セフィロスの底知れない実力とその需要を思えば基本的に仕方ないとあきらめているが、今年はどれだけ一緒に過ごせるの?とクリスマスが始まる一週間前に聞いた時、明日から長期任務だと言われたのは流石のエアリスでも絶句した。
 任務の二文字なら駄々を捏ねる訳にはいかないし、子供扱いもされたくない。
 でも、いつ帰って来るの?と思わずエアリスは悲壮な声を上げてしまい、年が明けたらすぐにと希代の英雄に無茶な約束をさせてしまった。
 マジかよ!アイシクルから大氷河周るんだぜ!?と側にいたザックスは悲鳴をあげたが、セフィロスの鋭い眼光に直ぐさまビシッと敬礼した。
 ――した後、かなり後悔していたみたいだけど。
 まあクリスマスをヴィンセントに甘えるユフィと、クラウドに熱視線を送るティファの間で切なく過ごしたことを思えばお釣が来るくらいだ。二人の恋路を応援する身としては喜ばしい部分もある。でもそれはエアリスの隣りにセフィロスがいて成立することなのだ。
 エアリスはクスクスと笑って、ソファーで寝るセフィロスを見つめた。
 英雄色を好む。とは言うが、女であるエアリスが羨む程に美しい容姿のセフィロスは誰も寄せ付けない輝きを持っている。
 眠るセフィロスを先ほど彫刻のようだとエアリスは思ったが、セフィロスそのものは石膏よりクリスタルの透明さがあった。
 触れてもいい?と尋ねたのも許可をもらえたのも最近で、その時と同じように瞼に唇を落とせば冷たさに気付く。
 人が持ちうる温度、触れた場所から溶けてしまえばいいと言ったのはセフィロスだった。
 こんな恥ずかしいセリフを言っても決まってしまうのは盲目のフィルターだけでない。アフロディテもかくやというセフィロスの容姿あってこそだろう。ザックスが言えば場は盛り上がるが、笑いが先にきそうだし。
 ひとしきりセフィロスを眺めた後、エアリスは小さくくしゃみをした。高揚した体が落ち着くにつれ、リビングに暖房が掛かっていないことを思い出す。
 年明けに帰ると約束させたのはエアリスで、このまま部屋に放置して神羅最強のソルジャーに風邪でも引かせたらルーファウスに何を言われるかわからない。もとい、風邪を引かせるつもりもない(彼を看病するのは魅力的であっても)エアリスは、少ししびれる足を起こし、まず暖房をつけようと部屋の隅に向かった。
 が、途端、ぐいっと遠慮のない力がエアリスの腕をつかむ。痛みはないが揺らいだ体を振り向かせると、美しい英雄が不機嫌な顔でいた。寝起きそのものの顔だった。
「起こしちゃった?」
 急いでエアリスが側に戻ってもセフィロスは笑みを向けることはない。少し不安になってセフィと呼ぶと、セフィロスは小さく呟いた。
「君がいなかった」
 え?とエアリスは首をかしげる。
「夢にお前がいなかった」
 それ以上にセフィロスは言葉を繋がなかったが、夢見が悪かったの?とエアリスが聞けば微かにああと答えた。
「不愉快な夢だ、目覚めて気付いた」
「私はここにいるわよ」
 わかってる、とエアリスから手を放す。名残惜しい気もしたが、ソファーから身を起こしてボキボキ首を鳴す姿は英雄ではなく、エアリスのセフィロスである。エアリスは微笑んだ。
「どうしてソファーに寝ていたの?」
 セフィロスの髪を手櫛で整えながらエアリスは尋ねる。
「ならば何故俺を起こさなかった」
 薄く笑うセフィロスにエアリスは意地悪ねと笑う。ヴィンセントに甘えるユフィのように、――とまで幼くはなれないが、寄り添えば回される手に、微かに香る血の匂いに酔ってしまいそうだった。
「今年はいつまでいれるの?」
「今から三時間後にジュノンへ向かう」
「……いやね、デリカシーの無い男って」
 エアリスはセフィロスの厚い胸板に頭をぶつけた。
「秘匿も考えたが、露呈した時の罰則を恐れてな」
「あら、英雄様にも恐れるものがあったのね」
「君に関しては怖いことだらけだ」
「ふうん、ならさっさと起こせばよかったな。すぐに出ていっちゃうなら」
「起こされたさ」
 膨れ顔をつくるエアリスをセフィロスはなだめるように耳元でささやく。
「君が触れた場所から、溶けていくんだ」
 これみよがしに、エアリスが先ほど触れた瞼をセフィロスは軽く閉じた。
「セフィ、いつから起きて――」
 エアリスの質問にセフィロスは答えるわけはなく、三時間という決められた時間を守るため迅速に行動した。
 溶けてしまったのは、どちらであるという答えはデリカシーがないので秘匿とする。




 魔理沙が目覚めたのは、まだ空が暗く、部屋の中でも息が白くなりそうな時間帯だった。昨夜、霖之助の年末の掃除やらなんやらを手伝い(自分の家はあの状態が一番きれいなのだ)、年越す瞬間に上白沢からもらったそばを食い、萃香からちょろまかした酒で盛り上がった後に布団に入ったのでまだ意識は遠い。
 家の枕ではなかったが、霖之助の布団であることと、疲れもあってすぐ眠れた。だがまだ寝たりない。なのに目が覚めたのは、肩までかぶっていたはずの布団が捲られていたからだ。
 原因は隣りの霖之助。魔理沙と違い、上半身を起こしたまま惚けたようにしているので、その分捲れ上がった布団が魔理沙の肩を向きだしにしている。
「……こーりん」
 恨めしげな目で丸められた背筋を上れば、癖の強い白い髪が揺れてこちらを向く。
「ん?起きてたのかい」
「起こされたんだぜ……」
 魔理沙は眉間にしわを寄せたが、霖之助のように起き上がらず、鼻先まで布団の奥に入った。
 夜更かしをしたので、いつものように毒舌を吐く元気はなく、かといって寒さですぐに眠れない。昨日の酒も残っているのか少し気怠かった。
 下戸な魔理沙と比べ、射命丸や紫とタメ張れるザルの霖之助だが、飲みたがりの魔理沙に付き合い昨晩は遅くまで飲んでいた。なのに、もう眼鏡をかけている。
 布団の中のぬくもりが減ることを危惧した魔理沙が霖之助の左足に自身の足を絡ませる。霖之助の素足は布団の中にあっても冷たい。
 それを責められていると勘違いした霖之助は、ぽつりと小さく呟いた。
「夢を見たんだ」
 魔理沙は小さくあくびをした。
「初夢か」
「さあ」
「どんな夢だ」
「君がいない夢」
 ほうと魔理沙は言う。
「悪夢だな」
「そうでもなかったよ」
 霖之助はきつく絡む魔理沙の足をはさんだ。皮は薄く、肉厚でもなかったが、さらさらして心地良い。
「君は初めから、僕が生まれて君の家で修行して、この店を持っても僕の目の前に現れなかったから」
「捜しはしなかったのか」
「知らない人を探せないさ」
 でも、と霖之助は続ける。
「少し寂しかった」
 翡翠と金が混ざった瞳が、魔理沙を見る。
「目覚めてから、気付いたのさ」
 薄く笑う霖之助の顔を見返せずに魔理沙は顔を伏せた。
「遅いな。シバき倒したいくらいだぜ」
「まあその分静かだったけど」
「ほう、じゃ私はいない方がいいのか」
「寝ている君は静かでいい」
 そうか、と魔理沙は足の拘束を外し、代わりに上半身だけ起き上がり霖之助の眼鏡を奪った。
「何する」
「今度はきちんと私がいる夢を見ろよ」
 にぃと笑う魔理沙に、霖之助は溜め息を吐く。
「それこそ悪夢だね。夢の中くらい静かにして欲しいものだ」
「夢の中じゃいくら手を出しても犯罪にゃならねーぜ」
「僕にまた頭突きをされろというのか……」
「ん?まだ痛むのか?」
「少し、……まさか昨日が満月だなんて思いもしなかったよ」
 霖之助は魔理沙から眼鏡を奪い返したが、それを掛けずに畳に直接置いた。
 それから魔理沙を連れて布団へと戻る。その一連の動きが自然で、慣れているじゃねーかと魔理沙の眉が動く。
「魔理沙は何か夢をみたのかい」
「よく覚えてないがアリスがいたな。なんか怒ってた」
「そう、僕はその夢に居たかな」
「たぶんいなかったぜ」
 霖之助は魔理沙の機微に気付かず目を薄めた。
「そうかい。感想は?」
「特に」
「そうかい」
「だから次は見ようと思うんだ。霊夢によると、その人の写真や肖像画を枕にするといいらしい。というわけでこーりん、腕貸せ」
「高いからな」
「夢の中で返してやるよ」
 ふああと遠慮なく開けた口に、霖之助の眉は歪んだが、生白い腕を渡す。
 座りのいい位置を探し、魔理沙の頭は動いたが、上椀筋に側頭部を置いて、瞼は下がった。
 幼い気持ちで寄り添うように回した腕は拒まれなかったが、真反対の意味で背中に回された腕に忍び寄る睡魔はぴくっと立ち止まり、魔理沙は少し身動ぎした。
「魔理沙」
「んー……」
 まさかと頬が赤くなるのを気のない返事で隠していると、年長の幼馴染みは子を抱く母のように背中をさすられた。とろとろしてくる。
「実は僕はこれでも半妖でね」
 しかしそれは、魔理沙を落ち着かせる為でも、愛撫でもなんでもなく、
「頭突き程度なら、なんてことないのさ」
 しゅる、と背中に回した寝間着の結び目が勢いよくほどかれた音を魔理沙は聞いた。

 次に魔理沙が目覚めたのは、日がとっぷり暮れて、少し欠けたお月様が輝いた夜のこと。


 ナチュラルにしょっぱなから一緒の布団で寝てるけどそれはそれーこれはこれー。正月だしね。
 ちなみにけーね先生とこーりんはお友達。ゆかりんとさくやさんとえーりんとゆうかりんは元カノ(体だけ、たまに心も)で、みょんは未遂でお送りされています。






 約束をしよう、お前も俺も守る約束を。


「――触らないで」

 確かにお互い神という存在であるが、だからと言って仏のように悟りが開けているわけではない。ムカツクこともあれば、泣きたいときもあるし、まだまだ知らない不可思議なこともたくさんある。
 この守矢神社に住む諏訪子と神奈子も右に同じで、神様だけど動けば腹も減るし、一緒にいれば仲違いもする。そもそも神とはいえ、性格が対極にいるような奴と仲良くし続けるのは難しいのだ。
 よって諏訪子も諏訪子と神奈子が喧嘩することは珍しくない。その理由は様々であるが、主なものは諏訪子の構ってに神奈子が癇癪を起こすこと。
 しかし喧嘩と一口にいえども昔のように大戦争を繰り広げるわけでも、弾幕をぶつけ合うわけでもない。ただ怒った神奈子が諏訪子を無視し、諏訪子も負けじと神奈子に背を向けるという比較的平穏である。間に挟まれる早苗はたまったものではないが、お互いを破壊するためだけの弾幕合せんよりはマシだ。
 ただ諏訪子は神奈子が諏訪子を無視するからそうするのであって、背中越しに彼女の機嫌が治ることを確かめている。性格は合わないが、諏訪子は神奈子を嫌ってはいない。神奈子もたぶん同じ。
 性格から見れば幼さが混じるのは諏訪子であるが、頑固さや大人気なさは神奈子が勝る。毎度毎度神奈子がさも当たり前のように我を押し通すので、諏訪子が負けてしまうだけなのだが、
「聞こえなかった?触るなっていってるの」
 神奈子の眉間に皺がよる。
 平素より容赦のない瞳に思わずたじろいだ諏訪子であるが、今、何故、神奈子がここまで怒るかわからない。
 いつものように遊べと迫ったわけでも、早苗を貸せとねだったわけでもない。わがままも言わず、一人でおとなしくケロケロケーと遊んでいた。
 ただ一人遊びの途中、普段はよりつかない守矢の神社の庫にふらりと立ち寄っただけ。その中で見つけた箱をちょっと開けてみようとしただけ。
 諏訪子が見つけた箱はその名の通り箱で、何の変哲もない薄汚れた箱だった。表にすら何も描かれておらず、時が経ちすぎたのか茶色に変色していてかなりばっちい。よく見ると金粉のような跡もあるが、それでも神奈子が好む派手さや華美はない。
 ただこの箱はそこらに放置されておらず、柔らかそうな緑のクッションの上に大事そうに置かれていた。
 ゴミやがらくたでは無い様子。だから諏訪子はこれを早苗のものだと勘違いした。そもそも庫に置いてあるのだから、神奈子か早苗のどちらかのものだと思ったが、まさか神奈子のものだったとは。
 早苗も私物をいじられれば怒るが、神奈子のように激しくはない。それに早苗は一度謝りさえすれば許してくれる。
 諏訪子が大きな瞳でじろじろ見つめ、呪いやまじない、封印の類いが無いことを確認し、さあ開けようとフタに手をかけたところで冷たい神奈子の声が庫に響いたのだ。
「……あ、うー」
 諏訪子が言いよどむ、苛烈さを増す神奈子の瞳。
 文字通り蛇に睨まれた蛙状態になった諏訪子に神奈子は舌打ちをし、固まる諏訪子の手から箱を奪う。
 乱暴な手つきだったが、触れたとたんに、箱に対する気遣いが指先に見て取れた。
 しかしそれも束の間、すぐさま諏訪子を神奈子は捕らえた。
「開けたの?」
「え」
「これを開けたかって聞いてるの、トロ臭いわね」
 神奈子が苛立たしげに、腕に抱く箱を見やる。開けるもなにも、諏訪子の見立てでは鍵も封呪もされていないただの空き箱である。フタを外せば簡単に中身が伺え、今まさに開けようとしていた諏訪子に神奈子の剣幕はわからない。
 要するに神の常識でいえば『開けられたくなければ鍵なり封印なりするべき』である。ついでにもっといえば『鍵も封呪もしていないフタが開いていないんだから、開けてないとわかるだろ』。
 しかし目の前の神奈子に言えるはずがない。ただ喉の奥から出て来た言葉は「開けてない」の一言だった。
 諏訪子の言葉に神奈子は、そう、とだけ言い、箱を元の位置に戻し、雷が落ちることを危惧する諏訪子をほって庫から出ていった。
 一人カビ臭い庫に置いてかれた諏訪子は目をぱちくりさせ、同時に身を固めたが、弾幕はおろか、罵声さえ飛んでこない。そのまま尻餅を付いてぼーっと神奈子がとうに去った後を見つめていると、箒と塵取りを持った早苗がやってきた。
「わっ諏訪子様。こんな場所でどうされました?」
 真面目そうな顔が小さな驚愕に揺れているが、心底諏訪子を気遣う声。一人ぽっちの(しかも神奈子に置いていかれた)諏訪子の心にそれは温かく染み渡り、諏訪子は思わず早苗の胸に飛び込んだ。

「そんなことがあったんですか」
 けろけろ泣いて離れない諏訪子をなだめすかし、台所に運んでお茶を淹れる。諏訪子が早苗に泣きつくのは普段と変わりないから、ここまでスムーズに事は運んだ。
 問題はこれからである。
「かなこが……」
 怒ったの。けろろーん(↓)と寂しげに鳴く神様に風祝は眉をハの字にする。
 神奈子様を怒らせるなんて日常茶飯事だろうに、嫌われた嫌われたと嘆く諏訪子に苦笑し、そっと茶菓子を差し出した。
「……にしても、箱というのは緑のクッションの上に置いてあったものですよね」
 こくり、と首を動かす諏訪子。ちなみにあれからあの箱には触っていない。触れるものか、と諏訪子は思う。
 ダメだ、こりゃ。神奈子の本気に当てられて意気が回復しない諏訪子に早苗はぽりぽりと頬をかく。
 確かに庫を勝手に弄った諏訪子は悪い。だがそれは『掃除したのに散らかされては困る』程度のもので、庫への出入り自体は自由だ。それに庫にしまうものなんてほとんどガラクタ。諏訪子が弄ろうが、どこぞの白黒魔女が持っていこうが構わない、いや構うけど。
 早苗はふうと息を吐いた。
 その仕草に諏訪子の肩は揺れるが、溜め息の原因は神奈子の方である。
 見られたくないなら自室にしまえばいいし、触られたくないなら手元に置けばいい。意地を張らずに、大切に大切に扱えばいいのに。
 それなのにあんな鍵もかからない庫に放置して、今もそこから動かさない。そのくせ専用クッションなんて用意する、――代わりに早苗がハタキでホコリ払えば、烈火のごとく怒るのだ。
 何百年たっても変わらない神様の所業を思い出し、早苗はどっと疲れた。そしてその中でも衰えない小さな可愛げに目尻を緩ませる。
「さなえー…?」
 諏訪子が首をかしげる。早苗は諏訪子に笑顔を向けた。
「あれは神奈子様の思い出の品ですから」
「あの箱が?」
 ずずーと茶をすすり、早苗は頷く。
「正確にいえば箱の中身です」
 諏訪子は、はて?と首をかしげた。諏訪子は箱を開けていないが、あの箱に中になにかが入っているような重みはあったか?たぶんない、ような気がする。そんな諏訪子の不思議そうな顔に早苗は笑う。そして少しだけ顔に暗を落とした。
 ――早苗、
「忘れる前に思い出す、思い出して悔しくなる。それなのに思い出を捨てられないのを、未練と呼ぶんでしょうね」
 ――あなたは。
「私にはよくわかりません」 なんてこっそり嘘を吐き、茶菓子を楊枝で割った。しかし上手く割れずにぐちゃりとアンコがはみ出してしまい、早苗は大きく溜め息をついた。


 一たんぶちぎりー。

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読書
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まったりしてたりしてなかったり
のんびりしてますので、どうぞ

 

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