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 魔理沙が目覚めたのは、まだ空が暗く、部屋の中でも息が白くなりそうな時間帯だった。昨夜、霖之助の年末の掃除やらなんやらを手伝い(自分の家はあの状態が一番きれいなのだ)、年越す瞬間に上白沢からもらったそばを食い、萃香からちょろまかした酒で盛り上がった後に布団に入ったのでまだ意識は遠い。
 家の枕ではなかったが、霖之助の布団であることと、疲れもあってすぐ眠れた。だがまだ寝たりない。なのに目が覚めたのは、肩までかぶっていたはずの布団が捲られていたからだ。
 原因は隣りの霖之助。魔理沙と違い、上半身を起こしたまま惚けたようにしているので、その分捲れ上がった布団が魔理沙の肩を向きだしにしている。
「……こーりん」
 恨めしげな目で丸められた背筋を上れば、癖の強い白い髪が揺れてこちらを向く。
「ん?起きてたのかい」
「起こされたんだぜ……」
 魔理沙は眉間にしわを寄せたが、霖之助のように起き上がらず、鼻先まで布団の奥に入った。
 夜更かしをしたので、いつものように毒舌を吐く元気はなく、かといって寒さですぐに眠れない。昨日の酒も残っているのか少し気怠かった。
 下戸な魔理沙と比べ、射命丸や紫とタメ張れるザルの霖之助だが、飲みたがりの魔理沙に付き合い昨晩は遅くまで飲んでいた。なのに、もう眼鏡をかけている。
 布団の中のぬくもりが減ることを危惧した魔理沙が霖之助の左足に自身の足を絡ませる。霖之助の素足は布団の中にあっても冷たい。
 それを責められていると勘違いした霖之助は、ぽつりと小さく呟いた。
「夢を見たんだ」
 魔理沙は小さくあくびをした。
「初夢か」
「さあ」
「どんな夢だ」
「君がいない夢」
 ほうと魔理沙は言う。
「悪夢だな」
「そうでもなかったよ」
 霖之助はきつく絡む魔理沙の足をはさんだ。皮は薄く、肉厚でもなかったが、さらさらして心地良い。
「君は初めから、僕が生まれて君の家で修行して、この店を持っても僕の目の前に現れなかったから」
「捜しはしなかったのか」
「知らない人を探せないさ」
 でも、と霖之助は続ける。
「少し寂しかった」
 翡翠と金が混ざった瞳が、魔理沙を見る。
「目覚めてから、気付いたのさ」
 薄く笑う霖之助の顔を見返せずに魔理沙は顔を伏せた。
「遅いな。シバき倒したいくらいだぜ」
「まあその分静かだったけど」
「ほう、じゃ私はいない方がいいのか」
「寝ている君は静かでいい」
 そうか、と魔理沙は足の拘束を外し、代わりに上半身だけ起き上がり霖之助の眼鏡を奪った。
「何する」
「今度はきちんと私がいる夢を見ろよ」
 にぃと笑う魔理沙に、霖之助は溜め息を吐く。
「それこそ悪夢だね。夢の中くらい静かにして欲しいものだ」
「夢の中じゃいくら手を出しても犯罪にゃならねーぜ」
「僕にまた頭突きをされろというのか……」
「ん?まだ痛むのか?」
「少し、……まさか昨日が満月だなんて思いもしなかったよ」
 霖之助は魔理沙から眼鏡を奪い返したが、それを掛けずに畳に直接置いた。
 それから魔理沙を連れて布団へと戻る。その一連の動きが自然で、慣れているじゃねーかと魔理沙の眉が動く。
「魔理沙は何か夢をみたのかい」
「よく覚えてないがアリスがいたな。なんか怒ってた」
「そう、僕はその夢に居たかな」
「たぶんいなかったぜ」
 霖之助は魔理沙の機微に気付かず目を薄めた。
「そうかい。感想は?」
「特に」
「そうかい」
「だから次は見ようと思うんだ。霊夢によると、その人の写真や肖像画を枕にするといいらしい。というわけでこーりん、腕貸せ」
「高いからな」
「夢の中で返してやるよ」
 ふああと遠慮なく開けた口に、霖之助の眉は歪んだが、生白い腕を渡す。
 座りのいい位置を探し、魔理沙の頭は動いたが、上椀筋に側頭部を置いて、瞼は下がった。
 幼い気持ちで寄り添うように回した腕は拒まれなかったが、真反対の意味で背中に回された腕に忍び寄る睡魔はぴくっと立ち止まり、魔理沙は少し身動ぎした。
「魔理沙」
「んー……」
 まさかと頬が赤くなるのを気のない返事で隠していると、年長の幼馴染みは子を抱く母のように背中をさすられた。とろとろしてくる。
「実は僕はこれでも半妖でね」
 しかしそれは、魔理沙を落ち着かせる為でも、愛撫でもなんでもなく、
「頭突き程度なら、なんてことないのさ」
 しゅる、と背中に回した寝間着の結び目が勢いよくほどかれた音を魔理沙は聞いた。

 次に魔理沙が目覚めたのは、日がとっぷり暮れて、少し欠けたお月様が輝いた夜のこと。


 ナチュラルにしょっぱなから一緒の布団で寝てるけどそれはそれーこれはこれー。正月だしね。
 ちなみにけーね先生とこーりんはお友達。ゆかりんとさくやさんとえーりんとゆうかりんは元カノ(体だけ、たまに心も)で、みょんは未遂でお送りされています。




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