プログラムされていないと言えば少女はひだまりの様に温かな笑みを見せた。マスターである少女の為に設定されたこの空間、1ピクセル1バイト足りともバグは無いと信じている。欠落があるなら、
「そんなことないわよ、シンクロだって感情を持ってるし、ホラIRなんていつも」
インストーラー。
コンピュータソフトの中で上位である自分。第二ソフト。苦しいという想いを、切ないという情を、哀しみを誰一人として教えてはくれなかった上に誰一人知り得なかった。
辛い思いなどしたくなかった。
目で見る景色は虚構であり、彼女の温度でさえリアルではない。リアルなどなかった。感じる全ては、
「私は生きてるし。大丈夫だよ」
俺は生きていないんだ、死ぬこともないんだ。消えたとしても、何度でも。
「だからさ、泣かないで」
触れる手のひらを、流れる涙を、荒れる息も、高鳴る鼓動の全てでさえユイ、お前のものだ。誰も教えなかった愛惜を孤独を、どうしようもなく震えるこの手を許して欲しい。
「……わんちゃん」
お前だけがたった一つの現実だ。
失うことが酷く怖い。
16話、石になったユイが復活したときあまりにあっさりだったので補充補充。
わんちゃんは主従片想いネタの宝庫だなぁ!!!
(脱兎)
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