(ツンデレじゃない気がします。)
(ビルがへたれただけ)
「貴方は駄目」
それに私が欲しいのはアリスよ、とため息を吐く彼女の小さな右手には身の丈程もある鎌。刃先には幾重にも塗り固められた血がこびりついている、彼女が愛した人の数だけ。
(首狂いの女王様)
アリスが安定していく事に不安定になる此の世界に自分、もしくは彼女が存在するのかはわからない。短く、途方もない時間を過ごすうちの芽生えた感情を吐露するのは簡単で、しかし彼女の目には一人(もしくはひとつ)しか映らない。
いつか消える存在ならば、彼女によって消されたいなど思わない。世界はアリス、私の全てはアリス。
それでも、
「ねぇビル、貴方の首を飛ばしたら、また生えて来るの?」
「生えないでしょうね」
(永遠など要らない。幸福は全てアリスのもの。それでも欲しい刹那。)
「じゃあ要らないわ」
つまらなそうなブロンドの髪。伏せられた青の瞳には二度と映らない。
さって行く後ろ姿はいつだって。
(鎌には彼女が愛した数だけの)
「では猫を愛していたのですか?」
その自分の声は悲鳴にも似て。(聞こえなければいい)(と願った)ドレスの裾を浮かせ、くるっと振り返った彼女の唇は、わなわなと震えて、鎌を握る小さな指先を白くさせた。
それから離れた分だけ近付き、私を睨む。彼女は何もいわない、ただ、鎌をにぎりしめる。
私はうやうやしく頭を下げて彼女の目の前に首を差し出した。鎌が(わかる)振り上げられる(私の)振り下ろされる。
(祈りにも似た全ての愛を、どうか)
私は目を閉じた。
「女王が鎌で人を殴ったの始めて見たよ、アリス」
「愛よ、愛」
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