(吐き気がする)
古泉、と彼が僕の名前を呼ぶ時、意識か無意識かは知らないけれど、いつも彼の眉尻はピクンと動く。始めはあまり心象の良くない僕の名を呼ぶ不愉快から来るものかと勝手に想像していたが違うらしい。そこまで彼はひどい人間では無かったし、僕もそこまで嫌われているということでも無いらしい。その事実は僕にそれなりの歓喜を与え、ここが部室で涼宮さんがいるにも関わらず僕の頬は緩みっ放しだった。
そんなに嬉しいのか。
掠れるように紡ぎ出された声は、彼が置いた黒のポーンに紛れて消えそうになっていた。それでも聞き取れたのは彼の声であったから。世界に不穏と奇妙を打ち込む神の引き金の一つであり、世界・未来・宇宙という統べての決定権を所有する声はどんな囁きであれ、僕は聞き逃さないように注意する。しなければならない。この僕自身が生き残る為に。僕の好きな人を生き残らせる為に。なんて馬鹿馬鹿しい、そして少しだけ。
(僕の周り全てが空虚な妄想であり、結論の読めない自己論であることなど僕はわかっている。)
3年前から変わらない、願えど進めど僕は何も手に入れられない。神はそんなことを望んでいないから。だからこそ何よりも愛しくて、誰よりも触れたくて。だからこそ、世界も未来も宇宙でさえ守りたい。だからこそ、僕は黙秘し、彼の嫌がる笑みを貼り付けて、彼の呼び掛けに応える。いつだって、そう。
「…疲れてんのに、無理して笑うなキショい」
死ねばいいのに。彼の好意を裏切る僕なんて、
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