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海に還るのではなく、水に帰る。
「淡水魚じゃからの」
尾が赤く染まった帯をゆらゆらさせて、彼は笑った。

"Mermaid princess had a happy time with human prince."

どんなに4月に購入した際、新品でも、10月になれば教科書もノートもボロボロになっていく。使い方が悪いのだと、どっかの老け顔はいうけど奴の教科書だって手垢で汚れている。それは奴が頑張った証なのだけど、私はそれを認めるのが少しくすぐったくていつも皮肉にしか笑えない。
手垢はついてないけど、折り目と付箋だけはいっちょ前についてある英語の教科書をめくりながら私は苦笑した。
そのとき、この感情と、その言葉が向かう人をいつも知る。

"But, prince was engaged to another princess."

(隣の席の子と協力してやれっていったの誰だ)
折り目のついた英語の教科書の最後の一文を睨みながら、私は唸る。
そして質素なつくりの筆箱(私のだけど)からピンク色(街角で配っていた)エイズ撲滅シャーペンを握り、カチカチと芯を出した。
(真田君)
――近頃の英語の教科というのは、読む力を養うリーディングと書く力を養うライティングがあり、一応くくりとしては同じ英語なのだが、教科は違う。
今私がやっているのはリーディング、しかもその和訳だ。

"Mermaid princess tristo kill the prince to live her life"

(逃げ出した、あのデブは何処に行った)
リーディングの教科書の内容は2つに分かれる。
一つは、偉人伝や歴史など知識的に読み取るものと、ノンフィクションや物語など、登場人物の感情を読み取るもととあり、他の頁は簡易辞典だったり復習頁だったりする。
今回のリーディングは、めんどくさいが感情を読み取る方のリーディングである。

"But...but, mermaid princess couldn't kill the him."

(追いかけた、桑原君は何をしている)
私は頬杖をつきながら、狭い机の真ん中に広げたノートにわからない単語を書く。
一応それなりの知識は授業と一般教養で知っているので適当に。
先生に提出しなくてはならないから、少しだけ真面目に。
……それなのに、あのデブハゲコンビはどこ行ったのだろう。先生だって、協力してやりなさいといったのに。
私は力を込めて、ノートにシャーペンを滑らせた。

"Because, she still loved…….

「海に還っていったんじゃよ」
「んなわけないでしょうが」

ちゃりちゃりと音が聞こえる。
目に入るのは私より細い腰、肌寒い10月になっても薄いワイシャツ1枚と学校指定の青いズボン。
見上げると銀色の襟足をファンシーなゴムでくくり、にやにやと私を見下ろす檸檬ティー色の瞳。
黒じゃない。

「におう」

私の声に呼応するように、彼は口の端をゆるやかに持ち上げた。




続かない!!!!





(テニスは難しいなぁ、脱兎)
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