いつもの雹右腕夢番外編
もー、こうなったら夢を夢にしてしまえ!!
悪乗り、BL平気、キャラ壊れててもOK!な人のみ↓
久しぶりに実家に帰った日曜日
寡黙な父親に挨拶し、心配性の母親に肩揉みと近況報告をして一休み
母方に似た俺より、父方に似た硬派な兄貴の部屋に唯一ある近代的器具のCDプレイヤーから聞こえる、またアニキにしては珍しい明るめの邦楽の音に俺は耳を傾けた
一曲聞いて、リピート
もう一曲聞いて、リピート
そしてストップ
「ねえ、アニキ、これ借りていい?」
◆勝手に毒シリーズ番外~All energy~◆
月曜日、放課後
今日も今日とて学力社会を生き抜く為に精進する俺はいつもと同じようにクタクタだった
60分授業ってありえなくねぇ?ありえねぇよな、つーかなんで毎日生徒会あんだよコラ、と俺はブツブツと呟きながらいつものように生徒会室へ向かう
生徒会室に入れば俺を誘惑してくるのは生徒会長もお気に入りのソファー
しかしいくら体が悲鳴を上げてもこのソファーに横にならないのはこの前遭った嫌な事件を二度と繰り返さないため
まぁ、腰掛けるくらいは許されると思うから、そこは正直に生きるけど
――汚れちまった僕のセカイ、浮いた話などない
どっしりといつものように疲れた体をふかふかのソファーに預けて目を閉じる
脅威の60分授業とこれからやってくる生徒会の御仕事に疲労困憊の脳味噌に響くのは、昨日アニキから借りてきたCDの内容
――染み付いた孤独論理、拭えなくなってる
少しアップテンポの明るめの曲は軽快に耳を通り抜ける
個性のある声はキーボードのメロディによく合う
本当はCDプレイヤーでいつでも聞きたいけど、校則が洒落にならない程厳しいジャスティスでは没収ならいいが、返してくれる可能性もない
つーか、授業に関係ないのに持ってきたら雹に殺される
この前だって多忙な雹を生徒会室で待っている間、暇つぶしに携帯でメールしてたらいつのまにか携帯が(縦に)真っ二つになっていたし
故に一人暮らしの身としては少しでも娯楽の道具は近くに置いていたい
「んー、俺的に一番に感情移入するかもしれないけど、二番が好きかもー」
「何がだ」
「うぉう!!」
いきなりの声の乱入に疲労で鈍った体は簡単にソファーから落ちかける(寸止め)
平成など装っている暇はない
ばくばく、と喉から飛び出そうになる心臓を服の上から抑え、見上げると雹がいた
「雹か、あービビッた!!」
「……私の気配を感じ取れないとは、精進が足りんな」
「はいはい精進足りませんよ、さぁさっさと御仕事しましょうか、生徒の為学校の為平和の為身を粉にして生徒会の御仕事楽しいな」
「……何をあからさまにギクシャクしている」
「うろたえてなんかいないよ、あ、膝がガクガクしてるのは、体育の授業でやったタップダンスの名残だから」
「………」
「や、ヤダなぁ、そんな目で見て、ほ、法に触れる事はしなかったよ、ただ」
「ただ?」
「いや、ちょっとね」
訝しげにこちらを見てくる雹を無視して俺はソファーから逃げる
心臓はまだバクバク言っている
……あー、ヤな汗掻いた、うん
というか人がめっちゃ寛いでいるっているトコピンポイントで狙わないで欲しい
まぁ、雹には無理だとわかってるけど
「雹」
「なんだ」
「今、雹ってさ、……子供?」
「――いきなり何が言いたい」
「いや、何と言うか、一応高校生じゃんよ、それでさ」
「……ふむ、まだ法律的に年齢が青年に至っていないという点では、まだ子供なのだろうな」
「―――」
「……何故青ざめる」
「いや、ね、俺は……ちょっと思い出した、まぁ事の始まりはアニキからCD借りて…」
其処まで言って、また頭に歌詞が戻ってくる
――さえぎるものはぶっ飛ばして まとわりつくものかわして
思い出すのは、初めて会った頃の、強い君
――止め処ない血と涙で渇いた心臓潤せ
乾くには若すぎて、留まる事など考えもしない
――あの頃の僕らはきっと全力で少年だった
それは、きっと
「………っ」
「何故涙目になって腹を抱えて笑いを堪えている」
「いや、……ただ、ね?微妙に合ってるなぁって、そしてら、雹も少年になるのかなっ、て、ぐふ、…ああ!刀抜くなよ!誉めて(?)んだし!」
「私が少年ではないと」
「まぁ、刀振り回す銃刀法違反のガキがいたら、俺は近寄りたくねぇ」
「………」
アニキの部屋で、コレを聞いて思ったんだ
試されてまでもここにいることを決めていた
別に呪文のように「仕方ない」と呟く訳じゃないけど
本当に君の傍が心地よかったりするんだ
……まぁいつかの携帯のように(縦に)真っ二つになりたくないので何も言わないけど
何だかんだ言って一番自分が可愛いんだ
勿論、今はだけど
「……貴様はどうだ」
「ん?あー、俺は少年って感じはしないな、ガキっていうか、やっぱガキだな」
「………」
「何で不満そうなんだよ、中途半端なトコでわけわかんねぇよ」
「……いつかわかる」
「そっか、ならいいや、―――さぁ仕事すっか、生徒と学校と生徒の為に、生徒会長」
「そうだな、さぁ走れ雑用係」
「ひでぇ」
俺は雹の言いように少し傷ついた風を見せて、それから肩を竦めた
柔らかくなった表情(まだそれなりに固いけど)を見て、のんびりと伸びをした
雹は雹で俺に興味がなくなったのかもう生徒会長椅子に座っていた
何だつまらん、と思ったり、雹の長い髪がこの前プレゼントした蒼の髪留めで括られていたのを見て微笑んだり
やはり、君の傍はとても心地いい
「……何か今俺ヤバイ道に足を突っ込みかけた気がした……」
「――どうした」
「んにゃ、ははは、まさかね……」
「真っ青になったり、馬鹿面を晒したり、つくづく訳のわからん奴だ、お前は」
「すんません……」
ガラクタの中に輝いてたものを救い上げて
大切なものがすべて埋もれてしまう前に
いつだって俺が手を貸そう
――まぁ、必要になれば、だけど
「貴様を理解するのに、長い時間がかかりそうだな」
「いや、雹も理解し辛い点では負けちゃいねーよ」
積み上げたものぶっ壊して 身につけたもの取っ払って
幾重に重なり合う描いた夢への放物線
紛れもなく僕らずっと全力で少年なんだ
「ずっとか」
「ずっと、だろうね」
濁った水に澄み渡る一滴
影を照らす太陽のように
――毒して毒される
ゆっくりと救い上げる
――幸せな毎日を
セカイはきっと、二人で開こう
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