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いつかイザークに「貴様ほど哀れな蝙蝠はいない」と言われたことがある

何百年前かも忘れた

それくらい昔の話である




「そんな蝙蝠姿でいつもあれの回りを飛び回り、腕も伸ばせないまま指も咥えずに見ていて何が楽しい」




それが楽しんだよ



イザークの皮肉の混じった軽口を止めたくて思わず言った台詞に、虚勢が入っていないといえば嘘になる





―――それでも

あのやたら白い横顔を見る度に焼け付く甘い傷みを心底大事にしているのは真実であるし、この千年間、花開かずとも大事に育ててきた蕾の温かさに支えられてきたことは事実なのだ




多分、愛だろう

いや、そこそこ愛だろう

そこそこだが愛らしいと思う

愛かもしれない

愛なのだろう

きっと愛なのだ

どこまでも続く永遠の愛

報われなくても良い

邪険にされても良い

この愛があれが糧とする真っ赤な血のように、生きるに支えさえなれればより良い




たとえ、愛されなくとも俺は











―――ゲホッ



肺の奥から競りあがるような乾いた咳が出る

咳と一緒にぼたぼたと口から垂れる赤い液体は大理石で出来た床に模様をつけた

燃え上がるような傷みと共に真っ赤な水玉模様がひとつ、ふたつ

ファンシーじゃないどころではないグロテスクなそれは俺の視界を赤く染める

確実に引き退いて行く意識を何とか保とうとするも、ぜえぜえと格好悪く四つんばいのままでいる俺には頭を振ることしか出来ない

喉はヒューヒューと情けない音しか出さないし、むしろ息をするのも辛い

咳が止まったにも関わらず留まる事を知らない真っ赤な血はきっと口内で切ったのが原因でなく内臓の損失により身体の底から吐いているのでその量は半端ではない

床を見ると水玉模様が水溜りになっていた



――やっぱり、この前の傷が、まだ治って無い



止める声も無視してやってきた戦場なのに、結局役立たずか、と後悔するように呟いたがその傷が回復するでもないし、血が止まる事も無い

困ったな、とまだ口の端だけでも笑えるので(多分)余裕はあるのだろうが生命には着実に死が迫っている

四つんばいの状態だけは何とか解消しようと上半身に力を入れてみた

滝のような血を吐いた




「馬鹿じゃないか」




目の前の(といっても真っ赤で見えない)人影がため息を吐く

あきれるというより馬鹿馬鹿しいという感じのため息だ

グラグラと落ち着かない顔を上げてその顔を見つめようとするが意味はない

わかったのは、四つんばいでぜぇぜぇと肩で息をする此方と違い、何とも優雅にその身の半分を真っ白い壁に預けている




「どうして、あんな奴に仕えている?」




前振りも無く根本的なことを尋ねて来た

てゆーか別に聞きたい事でもないだろうに、そう茶々でもいれようと思って口を開くとまた血をしこたま吐いた

汚物を見るような視線を感じる

血まみれの姿はそれなりに痛々しいだろうが、そんな目で見なくてもいいだろう

どうやってこのことを抗議しようかと考えたが、めんどくさくなって止めた




「お前がどんなに思って、どんなに想って、どんなに焦がれて、どんなに焦(じ)れて、どんなに狂って、どんなに病んで、どんなに心を痛めて、どんなに心を砕いて、どんなに心を爛れさせて、どんなに人を捨ててどんなに獣になってどんなに悪魔に誑かされてどんなに神を恨んでどんなに壊れてもどんなに崩れてもどんなに優しくなってどんなにどんなにどんなに、気が遠くなるほど愛しても、気が狂うほど愛しても、あれはお前を髪の一本ですら愛さないし想わないぞ、それが当たり前の世界で生きているしそれが当たり前の世界でこれから生きていくし、それが当たり前の世界は変わらない」




ごほ、咳払いが聞こえる

自分のではないが、もう血の沼と化した床にぼちゃりと何かが落ちた気がした

もう血の沼どころではない、血の海だ、これは

一応魔族という身分であるが、何故ここまで血を吐いても失血死にならないのか不思議でたまらない、逆に不安になってきた



無論、意識はレッドラインを超えている




「現に、今お前は死んで、あれは生きる」



ぼちゃり

ふいに喉が焼け付いて、何か、血の塊を吐いてしまった

真っ赤な塊

昔見た外国のコイン程度の大きさのそれはぶよぶよとグロテスクな形をしていて、びくびくと怯えるように動いている

まるで心臓みたいだ、と思った

恋をしている、心臓




「馬鹿じゃないか」




俺は何に馬鹿と言ったのかわからないまま笑う

それは単に四つんばいで口の周りがピエロの唇のように真っ赤になっているだろう自分の様子を想像したからだ、最期まで自分は下らない

ついでに意外と体は丈夫らしかった




「従僕が、主人の、主人を想わなくてどうするんだよ」




例えば好きだとか、例えば愛しているとか

そんなもの、意外と時間さえ過ぎればどうでも良くて

ただ傍に居ればいいとか、話したり馬鹿言ったり怒らせたり叱られたり吹っ飛ばされたりするのが楽しかったりして

優しくて冷たくて意地張りで世間知らずで結構アホでドジで間抜けで、そんなカッコ良くてカッコ悪いアイツを想っている時間が嬉しくて

自分以外の他の誰かを想ってる横顔とかは切ないけど

もう、仕えている幸せすぎて願うことが無いくらい

そんな時間を過ごしてきた、今までずっと

幸せすぎて、これ以上を考えられないくらい想っていた



「一方的かつ自虐的でいい訳にしか聞こえない」

「たった一匹の奴隷を、ここまでヤラレてんのに殺せない復讐者如きに何がわかるんだ?殺したければさっさと殺したらどうなんだよ」

「殺せないのではない、殺さないのだ、お前の死に行く様を見るために」

「残念ながら失血死にはまだまだ時間かかるぜ、これだけ血を吐いてもまだまだ平気だからな」

「空元気も自虐的で一方的かつ陰湿な片思いも見ていて痛々しい」



やはり馬鹿だ、と心の中で呟く

どんな傷みでも構わない

流れる血も薄れる意識も枯れた涙でさえアイツのだと胸を張れる

好きだと胸を張れる

愛していると叫べる

片思いが長すぎたんだ、きっと

だからこんなに胸が一杯で死ぬのが恐くない、ぶっちゃけ、未練はあるが

それでも、満たされている

何故自分が満たされるかわからなくて泣けてしまうほど想う

情けない片思いだと、笑いたい奴は笑えばいい




「あの日、あの夜に惚れたんだ、一目惚れで、それだけで充分なんだ」




今死ぬなんて、3日前には思いもしなかった

君は想ってくれるだろうか、悲しんでくれるだろうか

きっと「アホか」で終わるだろう

それでいい、それでこそ我が主だ

どうせいつかは消える

それが今なだけだ



「馬鹿か、お前は死ぬぞ」

「言ってろ、アンタのは知らないけど、俺の愛は無敵だ」





報われなくても良い

邪険にされても良い

この愛があれが糧とする真っ赤な血のように、生きるに支えさえなれればより良い

でも否定はしないで欲しい

拒絶も、出来るならしてくれるな

……もっと言えば、理解して欲しい

ああ、やはり強欲だな魔族って

あれも別の相手に片想いしてて、苦しい思いもしてて、それでも俺みたいに諦めきれなくて、死にかけているのに

それでも、それでも好きだから

だから愛していて

絶対で、揺ぎ無くて、それが、あれの誇りでもあって

たとえ、愛されなくとも俺は




「愛してる、――――   ・フィ  あ」




なんだよ、せっかくいえたのに、ファミリーネームすらちゃんと発音できないなんて

あーあー、どうすりゃいいんだよ、これから

失恋と別離が怖いから言わなかったのに

言ったら、これからどうなるだろ、まず絶対馬鹿って言われるね

それから何もなかったように喉が乾いただ、肩を揉めだ、アスランの世話しろだ、キラに会いたいだ、色々言われて、日が暮れて

また俺はアイツを好きになって

そんな少し切ない今日、出来ればずっと先

この想いが、少しでも長くこの世のあの人の元にあればそれでいい

いつかあの笑顔が、また隣でみれたらもっといい





――――世界が終わる瞬間

アイツの泣き顔が見えた気がした

アイツの回りをぱたぱたと飛んでいたあの頃のように、俺は手を伸ばすことも出来ずに、意識はプツリと途切れた













――と、書いている自分でさえ「こんなんが私の書きたい主従ではなーい!!」と深夜に怒鳴ります、zuizuiです

違うんだ、違うんだ!!

私の好きな主従は違うんだ!!

肉体的(をい)従(出きれば女)×主人(男)×従(女)で、精神、従(女)×主人(男)というぶっちゃけ雹夢を無茶苦茶書きたくてでも書いたら書いたで過去話とか考えてるからかけなくて……あー!!!(叫)

………んで、これはzuizuiが書きたい主従ではありません

違うんだ、ホント……orz

あ、あと学校の制服を着て恋愛(いけない事含みだが、そんな時は教室または生徒会室じゃないと駄目、他所不可)って言うのも可

どーせ書けないのでzuizui逃げ

ホンマ無駄に日記とか書いてすいません……(脱兎)
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