ウブと恥ずかしセリフで5のお題
配布元(PC)【ホツレ】様
2次配布&無断転写厳禁
05.マイスィ(ED後)
注:激ラブで真田がヘタレ(当社比)
例えば二人きりで居るときとか、ご飯を食べるときとか
考えるまでも無く彼女に夢中になれる瞬間と言う物は思いのほか沢山ある
自分としては一年間モヤモヤしていた分もあり、共に在れる時が嬉しくていつだって舞い上がりそうなる
しかし、彼女はいつも上の空だったりする
「でな、その時幸村が柳の髪の毛を掴み、引きずり倒したのだ」
「……」
「すると柳も切れて、あたりは阿鼻叫喚の地獄絵図となり」
「……」
「――――」
思いが通じてまだ一ヶ月
普通のカップルに置き換えても一ヶ月といえば、順調にいちゃつく時期ではないのかと真田は思うが何だこの擦れ違いは
よく最近の子供はあきやすいと良く聞くがまさか彼女に限ってと真田は思い、今日も幾度となく積極的に話し掛けてみたるのだが返答はない
しかもそれが結ばれてから一ヶ月も続くと22歳といえど心は傷つく
あまりの切なさにもう実家に帰らせて頂きますと言って逃げてもいいが、逃げたら逃げたで神と紳士が黙ってはいない
そんな訳で真田の心は梅雨入り前に大嵐が吹き荒れていた
「……俺が嫌いか」
ぼそり、と、しかし彼女に良く聞こえるように真田は呟いた
夕方、恒例となっている彼女の家で晩ご飯つくり☆(命名、幸村)というほんわかした雰囲気に似つかわないその声に彼女は驚いたように肩を振るわせた
しかし何だかそれが冷め切った真田の心には白々しく感じられ、切ないように顔を歪ませる
それを知ってか知らずか彼女は不機嫌そうに眉を顰めて、ホウレンソウのお浸しをもぐもぐと食べた
構わず真田は見つめる
すると居たたまれなくなったのか、彼女は顔を横に背けて呟いた
「そ……そーゆーネタは聞き飽きました!!てゆーか、いきなり何ですか!」
「先ほどから話し掛けても上の空なのはどちらだ」
ため息混じりに真田が言うと彼女はぐっと喉を詰まらせる
……別にたいしたことは言っていないだろう
そう思いつつも真田は言葉をつないだ
「一体誰のことを考えているのだ」
「……え、べ、別にいいじゃないですか、そんなの!」
「――言えんのか」
ぴしり、真田は自分の理性に皹が入ったのを感じる
しかし目の前の少女は自分から目を反らしたままだ
自然に眉間に皺が入った
「そ、そんな恐い顔しなくていいじゃないですか!てゆーか拗ねるな!逃げるな!トイレに篭ろうとするな!!」
「……だいたい、せっかく同じ時間を共有していると言うのに何だ、一ヶ月も前からボーっとして、何かやましい事でも在るのか」
「……」
「………あるのか?」
「そ……そんな目をしたって何も言いませんからね!」
「だったら答えてくれ」
「……な、なんて言いましたっけ?」
「―――」
もういい、拗ねてやる、拗ねてやる
浮気だ浮気、浮気に決定だ、ドコのどいつだ、人が苦労して手に入れたものを
なぶり殺しではすまない、幸村や柳生を呼んで血祭りにあげてやる
そうブチブチ呟きながら真田は自分の箸を取り、御手製のサトイモの煮っ転がしを口に突っ込んだ
自分で作ったそれは時間が立ちすぎたのかとても冷たく、味は一切感じられなかった
―――例えばご飯を食べるときとか、二人きりのとき
自分よりさらさらの黒髪に少し日に焼けた肌
伏せられた瞳に見える睫毛は意外に長いのを覚えている
伸ばされた長い指はゴツゴツしていて、とても温かい
体はがっしりしてるのに、部分部分は細かったりする
捜せば沢山、思えば山のように詰まれて、心が壊れる
頭の先から、爪の先まで支配される
繋がった思いはまだ熱すぎて、冷めそうに無い
繋がりたい思いが避けられない
「……聞こえないって選択肢はないんですか」
貴方の声が聞こえない
貴方を想う、心臓の音がうるさくて
【05.心臓の音がうるさくて】
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